AGA（男性型脱毛症）の治療薬として広く知られるフィナステリド。服用を開始してから1年という節目は、治療効果を評価する上で一つの重要なマイルストーンとなります。では、フィナステリドを1年間服用し続けると、髪の状態は一般的にどのように変化していくのでしょうか。まず理解しておきたいのは、フィナステリドの主な作用機序です。この薬は、AGAの原因物質であるDHT（ジヒドロテストステロン）の生成に関わる酵素（5αリダクターゼⅡ型）の働きを阻害します。DHTは髪の毛の成長期を短縮させ、毛包を小さくしてしまう作用があるため、フィナステリドはこのDHTの働きを抑えることで、ヘアサイクルの乱れを正常化し、抜け毛を減らすことを目指します。効果の現れ方には個人差が大きいですが、一般的には服用開始後3ヶ月から6ヶ月程度で、抜け毛の減少を実感し始める方が多いと言われています。これは、フィナステリドが作用し始め、ヘアサイクルの短縮にブレーキがかかり始めたサインと考えられます。そして、1年間の服用を継続すると、多くの場合、この抜け毛抑制効果がより明確になります。シャンプー時や枕元の抜け毛が明らかに減ったと感じる方が増えてくるでしょう。さらに、抜け毛が減るだけでなく、既存の髪の毛に変化が現れることも期待されます。DHTの影響で細く弱々しくなっていた髪の毛（軟毛）が、成長期を長く保てるようになることで、徐々に太く、ハリやコシのある髪へと成長していく可能性があります。髪全体のボリューム感が増したように感じたり、地肌の透け感が改善されたりする方もいます。また、人によっては、頭頂部や生え際に細い産毛が生えてくるのを確認できるかもしれません。これが徐々に成長し、しっかりとした髪の毛になっていくことも期待されます。ただし、これらの効果はすべての人に同じように現れるわけではありません。AGAの進行度、年齢、体質、生活習慣などによって、効果の程度や実感できるまでの期間は大きく異なります。1年経っても劇的な変化を感じられない方もいらっしゃいます。しかし、多くの場合、1年間の継続服用は、フィナステリドの効果を判断するための重要な期間と考えられています。