薄毛や抜け毛の悩みは多岐にわたりますが、すべてのケースが保険適用外というわけではありません。特定の病気が原因で脱毛症状が現れている場合、その原因疾患の治療に対して健康保険が適用される可能性があります。ここでは、保険適用となる可能性のある脱毛症について解説します。代表的な例としては、「円形脱毛症」が挙げられます。円形脱毛症は、自己免疫疾患の一種と考えられており、突然、円形または楕円形に毛が抜け落ちる病気です。軽症の場合は自然治癒することもありますが、多発したり、全頭型や汎発型に移行したりするケースもあります。円形脱毛症の治療としては、ステロイド外用薬や局所注射、紫外線療法、内服薬（抗アレルギー薬、免疫抑制剤など）などが用いられますが、これらは医師の診断に基づき、病気の治療として行われるため、基本的に保険適用となります。ただし、治療法によっては一部適用外となる場合もあるため、事前に確認が必要です。また、頭皮の「皮膚疾患」が原因で脱毛が起きている場合も、その皮膚疾患の治療は保険適用となります。例えば、脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌やマラセチア菌という真菌の影響で頭皮に炎症やかゆみ、フケなどが生じる病気ですが、重症化すると抜け毛が増えることがあります。この場合、抗真菌薬やステロイド外用薬などによる脂漏性皮膚炎の治療が保険適用で行われます。同様に、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などが頭皮に生じ、その影響で毛が抜ける場合も、原因となる皮膚炎の治療は保険診療となります。さらに、全身性の疾患が原因で脱毛が引き起こされることもあります。「甲状腺機能亢進症（バセドウ病）」や「甲状腺機能低下症（橋本病）」などの甲状腺疾患は、ホルモンバランスの乱れから脱毛を伴うことがあります。これらの病気自体の治療（内服薬など）は当然、保険適用です。他にも、膠原病（全身性エリテマトーデスなど）や梅毒、鉄欠乏性貧血などが原因で脱毛が起こることもあり、それぞれの原因疾患に対する治療が保険診療の対象となります。重要なのは、自己判断せずに医師の診察を受け、抜け毛の原因を特定することです。原因が病気であれば、適切な治療を保険適用で受けられる可能性があるのです。