薄毛

医師に聞くAGAと円形脱毛症の見分け方

AGA(男性型脱毛症)と円形脱毛症は、患者さん自身が見分けるのが難しい場合もあります。そこで、皮膚科医や毛髪専門医は、どのような点に注目してこの二つの脱毛症を診断しているのでしょうか。基本的な見分け方のポイントを解説します。まず、診察で最も重要視されるのは「脱毛のパターンと範囲」です。AGAの場合、前頭部の生え際(特にM字部分)や頭頂部といった、男性ホルモンの影響を受けやすい特定の部位から薄毛が進行する特徴があります。側頭部や後頭部の毛髪は比較的保たれることが多いです。一方、典型的な円形脱毛症では、境界が比較的はっきりとした円形または楕円形の脱毛斑が、頭部の様々な部位に突然出現します。特定のパターンはなく、どこにでもできる可能性があります。この脱毛パターンは、診断における大きな手がかりとなります。次に、「毛髪の状態」を詳しく観察します。マイクロスコープなどを用いて毛髪や毛穴の状態を確認します。AGAでは、罹患部の毛髪が細く短く、色も薄くなる「軟毛化」という現象が見られます。毛穴の数自体は減っていないことが多いですが、一つの毛穴から生えている毛の本数が減ったり、細い毛ばかりになったりします。一方、円形脱毛症の活動期には、脱毛斑の辺縁部に、毛根部分が細く、先端が太くなった「感嘆符毛(かんたんふもう)」と呼ばれる特徴的な切れ毛が見られることがあります。また、毛穴の中に黒い点(黒点)として毛が残っている場合もあります。これらの毛髪所見も、鑑別診断の重要なポイントです。さらに、「自覚症状」も参考にします。AGAの場合、通常、かゆみや痛みといった自覚症状は伴いません。一方、円形脱毛症では、発症前に軽いかゆみや違和感を感じる方もいらっしゃいます。また、「発症時期や進行速度」も異なります。AGAは思春期以降に徐々に進行することが多いのに対し、円形脱毛症は年齢に関係なく、比較的短期間で急速に脱毛斑が現れることがあります。「既往歴や家族歴」も問診で確認します。AGAは遺伝的要因が強いとされています。円形脱毛症は、自己免疫疾患であるため、甲状腺疾患やアトピー性皮膚炎などの他の自己免疫疾患の既往や合併、家族歴などが参考にされることがあります。これらの情報を総合的に判断し、医師は診断を下します。ただし、非典型的なケースや併発例もあるため、最終的な診断は専門医による慎重な評価が必要です。