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知っておきたいケトコナゾール内服薬

ケトコナゾールには、塗り薬やシャンプーだけでなく、飲み薬(内服薬)も存在します。体の内部から作用するため、皮膚の表面だけでなく、内臓などに感染した深在性真菌症の治療にも用いられてきました。しかし、現在、ケトコナゾールの内服薬が処方されるケースは非常に限られています。その最大の理由は、「重篤な副作用のリスク」が高いとされているからです。特に注意が必要なのが「肝機能障害」です。ケトコナゾール内服薬は、肝臓に負担をかけることが知られており、中には劇症肝炎などの重篤な肝障害を引き起こし、死に至ったケースも報告されています。そのため、内服治療を行う場合は、治療開始前および治療中に定期的な肝機能検査が必須となり、異常が見られた場合は直ちに投与を中止する必要があります。肝臓に持病がある方や、肝機能が低下している方は、原則として使用できません。また、ケトコナゾール内服薬は、他の多くの薬剤との「薬物相互作用」を起こしやすいという問題点もあります。肝臓での薬物代謝酵素(特にCYP3A4)の働きを強く阻害するため、併用する薬の血中濃度を著しく上昇させ、予期せぬ重篤な副作用を引き起こす可能性があります。例えば、特定の抗不整脈薬、睡眠薬、高脂血症治療薬など、併用が禁止されている(併用禁忌)薬剤が多数存在します。他にも、併用に注意が必要な薬剤も多く、ケトコナゾール内服薬を服用する場合は、現在使用しているすべての薬(市販薬やサプリメントを含む)を医師や薬剤師に正確に伝える必要があります。さらに、内分泌系への影響として、副腎皮質ホルモンや男性ホルモン(テストステロン)の合成を抑制する作用も知られています。これにより、倦怠感や性機能障害(勃起不全、月経不順など)といった副作用が現れる可能性もあります。これらのリスクを考慮し、現在では、より安全性の高い他の抗真菌薬(例えば、イトラコナゾールやフルコナゾール、ボリコナゾールなど)が開発され、深在性真菌症治療の第一選択薬となっています。ケトコナゾール内服薬は、これらの代替薬が使えない、あるいは効果がないといった、ごく限られた状況においてのみ、医師がリスクとベネフィットを慎重に検討した上で、厳重な管理下で使用される薬剤となっています。安易な使用は絶対に避けるべきであり、必ず専門医の指示に従う必要があります。