薄毛や抜け毛の治療、いわゆる「髪育」には、様々なアプローチがあります。代表的なものとして、飲み薬(内服薬)、塗り薬(外用薬)、そして近年注目されている「髪育注射」(注入療法)が挙げられます。これらの治療法は、それぞれに特徴があり、作用機序やメリット・デメリットが異なります。髪育注射は、これらの治療法の中でどのような位置づけにあるのでしょうか。まず、「飲み薬(内服薬)」の代表であるフィナステリドやデュタステリドは、AGA(男性型脱毛症)の原因物質であるDHTの生成を抑制することで、抜け毛を防ぎ、ヘアサイクルの乱れを改善します。体の中から作用するため、全身的な効果が期待できる一方、ごく稀に性機能への影響などの全身性の副作用のリスクがあります。効果を実感するまでには、通常数ヶ月以上の継続が必要です。「塗り薬(外用薬)」の代表であるミノキシジルは、頭皮に直接塗布することで、毛母細胞を活性化させ、血行を促進し、発毛を促します。局所的に作用するため、全身性の副作用のリスクは低いとされていますが、塗布した部位のかゆみやかぶれといった皮膚症状が出ることがあります。また、有効成分が毛根まで十分に浸透しにくいという課題も指摘されています。これに対し、「髪育注射(注入療法)」は、発毛促進や頭皮環境改善に有効な成分を、頭皮の必要な場所に直接注入する方法です。有効成分を効率的に届けられるため、よりダイレクトな効果や、他の治療法に比べて早期の効果発現が期待されます。また、局所的な治療であるため、全身性の副作用のリスクは低いと考えられています。しかし、施術時の痛みや局所的な副作用のリスク、そして費用が高額になりやすいというデメリットもあります。髪育注射の位置づけとしては、まず「内服薬や外用薬の効果を高めるための併用療法」として用いられるケースが多くあります。基本的な治療を続けながら、髪育注射を加えることで、より早く、より高い効果を目指します。また、「内服薬の副作用が心配な方や、内服薬が使用できない方の代替治療」としても選択されることがあります。さらに、「より積極的に発毛を促したい、髪質改善を目指したい」という方のための、攻めの治療法としても位置づけられます。最適な治療法は個人の状況により異なるため、医師と相談し、各治療の利点と欠点を理解した上で治療計画を立てることが重要です。
— AGA —
飲み薬や塗り薬とどう違う?髪育注射の位置づけ
2021年12月12日