育毛に良いとされる特定の食べ物や栄養素について知ると、ついそればかりを集中して摂ろうとしてしまいがちです。「亜鉛が良いらしいから牡蠣をたくさん食べよう」「タンパク質が必要だから毎日お肉を食べよう」といった具合です。もちろん、これらの栄養素が育毛にとって重要であることは事実ですが、特定の食品や栄養素だけに偏った食事は、かえって逆効果になる可能性もあります。なぜなら、私たちの体は、様々な栄養素が互いに協力し合い、バランスを取りながら機能しているからです。髪の毛の成長も例外ではありません。例えば、タンパク質を効率よく利用するためにはビタミンB6が必要ですし、鉄分の吸収を高めるにはビタミンCが役立ちます。亜鉛も、単独で摂るよりも他のミネラルやビタミンとのバランスが取れている方が、体内で有効に活用されやすいと考えられています。ある特定の栄養素だけを過剰に摂取すると、他の栄養素の吸収を妨げたり、体内のミネラルバランスを崩してしまったりする可能性もあります。例えば、亜鉛を過剰に摂りすぎると、銅や鉄の吸収が阻害されることが知られています。また、どんなに体に良いとされる食品でも、そればかりを食べ続けていれば、他の食品から得られるはずの多様な栄養素が不足してしまいます。栄養バランスの偏りは、髪だけでなく、体全体の健康にも悪影響を及ぼしかねません。育毛のために最も大切なのは、「特定の何か」を食べる(あるいは食べない)ことではなく、「多様な食品をバランス良く食べること」なのです。主食(ご飯、パン、麺類)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品)、副菜(野菜、海藻、きのこ類)を揃えることを意識し、できるだけ多くの種類の食材を食卓に取り入れるように心がけましょう。彩り豊かな食事は、自然と栄養バランスも整いやすくなります。また、食事は量よりも質を重視することも大切です。インスタント食品や加工食品はできるだけ避け、素材の味を活かした調理法(蒸す、茹でる、焼くなど)を選ぶようにしましょう。完璧な食事を毎日続けるのは難しいかもしれませんが、まずは「バランス」を意識することから始めてみてください。特定の食品に頼るのではなく、幅広い食品から栄養を摂ることが、健やかな髪を育むための王道であり、最も確実な方法と言えるでしょう。
— AGA —
偏りは禁物。育毛の鍵は食バランス
2022年6月2日