「髪育注射」（毛髪再生メソセラピー、AGA注射）の最大の特徴は、髪の成長や頭皮環境の改善に役立つ様々な有効成分を、頭皮に直接注入できる点にあります。クリニックや治療プログラムによって使用される成分は異なりますが、ここでは代表的なものとその期待される働きについて解説します。まず、近年特に注目されているのが「成長因子（グロースファクター）」です。これは、体内で細胞の増殖や分化をコントロールするタンパク質の総称で、毛髪の成長サイクルにおいても非常に重要な役割を果たしています。例えば、KGF（ケラチノサイト成長因子）は毛母細胞の分裂を促進し、IGF（インスリン様成長因子）は毛髪の成長期間を延長させ、VEGF（血管内皮細胞成長因子）は頭皮の血管新生を促し血行を改善するといった働きが知られています。これらの成長因子を複数組み合わせた「成長因子カクテル」を注入することで、毛根を強力に刺激し、発毛を促す効果が期待されます。次に、AGA治療薬として実績のある成分も注入療法に用いられます。「ミノキシジル」は、血管拡張作用による血行促進効果と、毛母細胞への直接的な活性化作用により、発毛を促進します。外用薬としても広く使われていますが、注入することでよりダイレクトに作用させようという狙いがあります。「フィナステリド」や「デュタステリド」は、AGAの原因となる男性ホルモンDHTの生成を抑制する薬ですが、これも注入療法に応用されることがあります。内服による全身性の副作用を避けたい場合に選択されることがあります。さらに、髪の毛の健やかな成長に必要な栄養素も配合されることがあります。「ビタミンB群」はエネルギー代謝や新陳代謝を助け、「ビオチン」はケラチンの生成に関与します。「亜鉛」などのミネラルは、髪の主成分であるケラチンの合成に不可欠です。また、ケラチンの材料となる「アミノ酸」そのものを注入する場合もあります。これらの栄養素は、頭皮環境を整え、他の有効成分の効果を高めるサポート役として期待されます。どの成分を、どのくらいの濃度で、どのように組み合わせて使用するかは、医師が患者さんの状態や目的に合わせて判断します。カウンセリング時に、どのような成分が使われるのか、その効果について詳しく説明を聞くことが大切です。