男性の方で、「最近、おでこが広くなった気がする」「生え際のM字部分が以前より後退してきた」と感じている場合、それはAGA(男性型脱毛症)のサインかもしれません。AGAは成人男性に最も多く見られる脱毛症で、日本人男性の約3人に1人が発症するとも言われています。そして、その多くが、前髪の生え際や頭頂部から薄毛が進行するという特徴を持っています。AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることです。このDHTが、毛根にある毛乳頭細胞の受容体と結合すると、髪の成長期を短縮させる脱毛シグナルが発せられます。通常、髪の毛は2年から6年程度の成長期を経て太く長く成長しますが、AGAを発症すると、この成長期が数ヶ月から1年程度に短縮されてしまいます。その結果、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちてしまい、細く短い毛(軟毛)が増え、地肌が透けて見えるようになるのです。特に、前頭部(生え際)と頭頂部の毛根には、DHTの影響を受ける受容体が多く存在するため、AGAはこの部分から進行しやすいとされています。側頭部や後頭部の髪は、比較的DHTの影響を受けにくいため、薄毛が進行してもこれらの部分の髪は残りやすい傾向があります。AGAは進行性の脱毛症であり、残念ながら自然に治癒することは期待できません。放置しておくと、薄毛は徐々に進行していきます。しかし、適切な治療を早期に開始すれば、その進行を抑制したり、改善したりすることが可能です。主な治療法としては、DHTの生成を抑制するフィナステリドやデュタステリドといった内服薬や、毛母細胞を活性化させ発毛を促すミノキシジルの外用薬などがあります。これらの治療薬は、医師の処方が必要となる医療用医薬品です。もし、前髪の生え際の後退や薄毛が気になり始めたら、「まだ大丈夫だろう」「そのうち治るだろう」と自己判断せず、できるだけ早く皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、正確な診断を受けることが重要です。「AGAかもしれない」というサインを見逃さず、早期に適切な対策を講じることが、将来の髪を守るための鍵となります。
— AGA —
生え際後退はAGAのサインかも?
2019年9月21日