薄毛や抜け毛の原因は、AGA（男性型脱毛症）や生活習慣の乱れだけではありません。時には、体の内部に潜む「病気」が原因となって、脱毛症状が現れることがあります。もし、急に抜け毛が増えた、広範囲にわたって髪が薄くなった、あるいは他の体調不良も伴っているといった場合は、単なる髪の問題として片付けず、病気の可能性も疑ってみる必要があります。脱毛症状を引き起こす可能性のある代表的な疾患としては、まず「甲状腺疾患」が挙げられます。甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝をコントロールしており、髪の毛の成長にも関わっています。甲状腺機能亢進症（バセドウ病など）でも、甲状腺機能低下症（橋本病など）でも、ホルモンバランスの乱れから脱毛が起こることがあります。髪全体のボリュームが減るびまん性の脱毛が見られることが多いです。次に、「膠原病（こうげんびょう）」も原因となり得ます。膠原病は、免疫系の異常によって全身の結合組織に炎症が起こる病気の総称で、全身性エリテマトーデス（SLE）などが代表的です。これらの病気では、免疫異常が毛根を攻撃したり、血行障害が起きたりすることで、脱毛症状が現れることがあります。円形脱毛症のような脱毛斑や、びまん性の脱毛が見られることがあります。「鉄欠乏性貧血」も、特に女性の薄毛の原因として見逃せません。鉄分は血液中のヘモグロビンの成分であり、酸素を運ぶ役割を担っています。鉄分が不足して貧血になると、頭皮への酸素供給が不十分になり、毛根の働きが低下して抜け毛が増えることがあります。髪が細くなったり、ツヤがなくなったりといった症状も伴うことがあります。その他、「梅毒」などの感染症や、特定の「皮膚疾患」（重度の脂漏性皮膚炎や頭部白癬など）が原因で脱毛が起こることもあります。また、「薬剤の副作用」として脱毛が現れるケースも少なくありません。抗がん剤が有名ですが、その他にも、一部の降圧剤、抗うつ薬、インターフェロン製剤などで脱毛の副作用が報告されています。これらの病気や薬剤が原因の場合、薄毛対策としては、まず原因となっている病気の治療や、原因薬剤の中止・変更が最優先となります。原因が取り除かれれば、脱毛症状も改善する可能性が高いです。原因不明の脱毛や急激な脱毛、他の体調不良が伴う場合は、自己判断せずに必ず医師（まずは皮膚科、場合によっては内科）を受診しましょう。