AGA(男性型脱毛症)と円形脱毛症は、どちらも髪が抜けるという点で共通していますが、その発症原因は全く異なります。原因が違えば、当然アプローチも変わってくるため、この違いを理解しておくことは非常に重要です。AGAの主な原因は、遺伝的素因と男性ホルモンの影響です。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、毛根周辺に存在する5αリダクターゼという酵素によって、より強力なDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。このDHTが、毛根にあるアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)と結合すると、髪の成長期を短縮させるシグナルが出され、髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまうのです。アンドロゲンレセプターの感受性の高さや、5αリダクターゼの活性の強さには遺伝的な個人差があり、これがAGAの発症しやすさに関わっています。つまり、AGAは体質的な要因が大きい進行性の脱毛症と言えます。一方、円形脱毛症の原因は、現在のところ「自己免疫疾患」であると考えられています。何らかの原因で免疫システムに異常が生じ、本来体を守るはずのリンパ球が、自分自身の毛根組織を異物とみなして攻撃してしまうのです。毛根が攻撃されると、炎症が起こり、髪の毛が正常に成長できなくなって抜け落ちてしまいます。なぜ免疫システムに異常が起こるのか、その引き金となる明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、精神的なストレス、疲労、感染症、遺伝的素因(アトピー素因など)などが関与している可能性が指摘されています。AGAがホルモンの影響によるものであるのに対し、円形脱毛症は免疫系の異常が原因であり、両者は全く異なる病態生理に基づいています。この根本的な違いが、症状の現れ方や治療法の選択に反映されるのです。
— AGA —
AGAと円形脱毛症なぜ起こる?原因の違い
2023年3月28日